の手は大きな鍵をにぎっているではありませんか。大きい鍵です。もし近づいてよく見た人があったら、その鍵の握りのところに猿の彫りものがついているのがわかったでしょう――といってくれば、この箱から生えている手の持主が何者であるか、そろそろおわかりになったでしょう。
 そうです。この大きな箱の中には、帆村荘六探偵がはいっていました。そしてもう一つの小さい箱の中には一彦少年がはいっていました。
 二人は、怪塔王の目をくらますために、こうして底のない箱にはいったり、馬車をやとったりしたのでありました。
 いまや、鍵を握った帆村探偵の手は、鍵穴にとどきました。鍵はすいこまれるように鍵穴にはいりました。
「さあしめた!」
 鍵をまわすと、がちゃりと錠は外れました。二人はもう大よろこびです。かぶっていた箱を表に放りだすと、すばやく塔の中にとびこみ、ぴたりと入口をしめました。
 はじめてはいった怪塔の中!


   螺旋《らせん》階段



     1

 怪塔の中は、まっくらです。
 帆村探偵と一彦少年とは、用意にもってきた懐中電灯をぱっとつけました。あたりを照らしてみるとそこはまるで物置のように、な
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