議がってテレビジョンを方々へまわしてみましたが、なんの変ったこともありません。ただ塔の前に、大きな木箱が二つ落ちているばかりでした。そして積荷をおとした馬車が向こうへゆくのも見えます。
「なんだ、ばかばかしい。あの箱が落ちた音だったか。ああねむいねむい」
 と、怪塔王はまた寝床にもぐりました。

     3

 二つの木箱がそろそろと塔の入口にむかって匍《は》いだしたときには、怪塔王はテレビジョンを消して、もう寝床の中にはいったあとでありました。
 もっと永く起きていれば、このそろそろ動く怪しい木箱が目にうつったかも知れないのです。怪塔王にとっては珍しい大失敗でした。
 二つの木箱は、塔の入口にぴったりとよりそいました。
 すると木箱はすうと持ちあがり、箱の下に二本の足がにょきりと生《は》えました。二つの箱ともそうなのでしたが、一方の箱の足は長く、もう一つの箱の足は短くて細くありました。
 そのうちに、長い足の生えた木箱の横腹に、円い穴がぽかりとあきました。
 しばらくすると、その穴の中から一本の手がにゅうと出てきました。
 その手は、しきりに入口の扉をさぐっています。よく見ると、そ
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