す。二時間ほど眠ると、こんどはまた起出して、夜中から朝がたまで仕事をするのです。これを怪塔王の間眠《あいだねむり》と申します。
 しかし塔の前で、馬車の上から大きな木箱が、がらがらずどんと大きな音をたてて地面の上に転げおちたその地響《じひびき》に、ふと目をさましました。
「な、なんだろう。軍艦のやつめ、大砲をうちだしたかな」
 と、寝床から起きあがって、テレビジョンを壁にうつしてみました。
 このテレビジョンの器械には、自動車のハンドルみたいなものがついていて、これを廻すとレンズがうごきます。そのレンズの向いた方角なら、どこでも塔の外の景色が思いのままに壁にうつるのでありました。
 昼間だけではありません。夜間でもはっきりうつります。テレビジョン器械は、人間の眼よりもはるかに感じがするどく、人間の眼にみえないものでも器械の力でよく壁にうつしだすのです。
 怪塔王は、レンズを軍艦の方にむけ、壁に夜の海面の光景をうつしだしました。軍艦が大砲をうつと大砲の煙が出ているはずです。そう思って怪塔王が見てみましたが、一向《いっこう》煙もあがっていません。
「じゃあ何の音だろう」
 と、怪塔王は不思
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