急に駈けだしました。そのとき、車の上から、積んでいた木箱がつづいて二つ、がたんと地上に転げおちました。それは馬車が急に走りだしたせいでありましょう。
木箱二つが、砂の上に転がりおちたことを馭者は知らないようでありました。彼はなにかわけのわからぬことをわめきながら、かわいそうな痩馬に、ぴしぴしと鞭を加えて走らせていきます。そしてそのまま闇の中に見えなくなってしまいました。
砂上にのこされた木箱二つ。いつ誰が拾いにきてくれますやら。
この木箱の落ちたところは、ちょうど例の怪塔の扉の前でありました。怪塔王は、この木箱を室のうちから見たのか見なかったのかわかりません。
それから二十分もたってのちのことでありました。もう誰にも忘れられたような二つの木箱が、そのとき不思議にも砂の上をしずかにはいだしました。まるで木箱が生き物になったようです。一体これはどうしたというのでありましょうか。
2
怪塔王は塔の中で一体なにをしていたのでしょうか。
怪塔王は、そのとき寝床のなかにあの変な顔をうずめてぐうぐうと眠っていました。怪塔王は、夜が更けると一度すこしのあいだ寝ることにしていま
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