は、他の敵の手にも握られています。
「撃つのか。うまく中《あた》ったらおなぐさみだ」
 兵曹長は、ピストルのおそろしいことなどを全くしらないようです。
 相手は、自分を俘虜《ふりょ》にしたいのであって、殺すつもりではないことを、はやくも見ぬいていたからです。
 果して、ピストルをもっていない十人ばかりの敵が、合図とともにどっと押しよせてきました。
「おお来たな。そんなに俺に投げとばされたいか」
 兵曹長は、敵の来るのを待たず、自分からすすんで敵の一人にとびつき、
「やっ!」
 と、あざやかな巴投《ともえなげ》で、相手の体を水車のように投げとばしました。
 あとの敵は、不意をくらい、その場に重なりあって両手をつきました。それをみるや、兵曹長は栄螺《さざえ》のような拳固をかためて、手もとに近い敵から、その頬ぺたを、ぱしんぱしんとなぐりつけました。いや、いい音のすることといったら。――

     4

 小浜兵曹長は、海ばたで、十数人の敵を相手に、格闘をつづけています。
「どうだ、降参か!」
 と、叫んでは投げ、どなっては投げ、敵の荒くれ男をころがしました。
 ルパシカ男も黒人も、地上に匐
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