気がついたらしいのです。
「ああ、どうも暑くてたまらん。なんて暑いのだろう。のどが乾いて、からからだ」
 兵曹長は、座席の下から水筒をとりだし、目をつぶって、がぶがぶとうまそうにのみました。
 ふと気がついてみると、これは青江三空曹の名のはいった水筒でありました。怪塔王と闘って、ついに壮烈な死をとげた青江三空曹のことが、いまさらに思い出されて、兵曹長ははらはらと涙をこぼしました。
「おい、青江。空のどこからか俺の声を聞いているか。俺はきっと貴様の仇を討ってやるぞ。俺のすることを見ていろ!」
 と、ひとりごとをいいながら、また水筒の水をがぶがぶとのみましたが、
「やあ青江、いま貴様の水筒から水をのんでいるぞ。どうもごちそうさま、貴様は暑かないのか。なに、もう神様になったら、ちっとも暑くないって。よしよしわかった。それじゃ、もう一口水筒の水をごちそうになる。いやどうもすまん」
 兵曹長は、ひとり芝居《しばい》をやりながら、また水筒の水をがぶがぶとのみ、とうとう水筒をからにしてしまいました。よほどのどが乾いていたようです。むりもありません。昨日からの兵曹長の奮闘ぶりといい、そして今またこの暑
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