ない二時間半の飛行に、さすがの勇士も、気力も体力もくたくたになってしまいました。いよいよ翼を波にぱくりと呑まれる時がやってきた、と思いました。
「ざんねんだ。青江のかたきをとらないうちに死ぬなんて、じつにざんねんだ」
兵曹長は、歯をくいしばり、眼をしばたたいて、眼下の真白な波浪をにらみつけました。そのときです。彼は、ふと前方に、まっくろな鯨《くじら》のようなものがよこたわっているのに気がつきました。
「あっ、あれは何だ。鯨か?」
眼をしきりにぱちぱちやって、この黒影を見ていた兵曹長の頬に、さっと血の色がわきました。
「あっ、あれゃ島だ! 島だ!」
島が見つかったのです。死の一歩前に、島影が見えるなんて、何という天佑《てんゆう》でしょう。
小浜兵曹長の元気は百倍しました。
「何としても、あの島まで辿《たど》りつかなければ――」
それから先は、夢中でありました。どこをどう飛んだのか、気のついたときは、飛行機のエンジンはぴたりととまっていました。
4
小浜兵曹長は、夢のようにあたりを見まわしました。
嵐は、あいかわらずごうごうと吹きまくっていますが、飛行機の下にあ
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