怪塔ロケットを追うどころか、こうして飛んでいることがあぶなくなりました。小浜兵曹長は、荒れくるう暴風雨を相手に、腕も折れよと操縦桿をにぎり、両足[#「両足」は底本では「雨足」]をふんばって、この危機をぬけようと必死の努力をしています。が、雨と風とにたたかれ、いまは海面に車輪がすれすれの低空飛行です。ああ!

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 たのみにおもう無電はきかず、愛機は雨と風とにたたきつけられ、ともすれば車輪がざざーっと怒濤《どとう》に洗われます。一たびは空中にいのちをひろいながらも、ついに今ここに小浜兵曹長の運命もおわるかとおもわれました。
「敵陣に自爆するのなら帝国軍人の本懐であるが、あれ狂う海中につっこんで、死んで何になるのだ。よし、俺はどうしてもこの暴風雨と海とを征服してやるぞ」
 兵曹長は、機上でこう叫びました。
 飛行眼鏡もすっかり曇って、もう駄目です。翼はいくたびか波浪にばっさりと呑《の》まれそうです。人力ではどうすることもできない自然力の猛威です。
 それでもわが小浜兵曹長は、飛びつづけました。それは二時間半というながい時間の後でありました。どこをどう飛んだか、ちっとも油断のなら
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