三空曹の悲痛なさけびです。
これはいけないと思った小浜兵曹長は、いそぎこれをたすけようと空中で自由にならない両脚をば、歯をくいしばって青江三空曹の方にむけて開き、彼の胴中をその両脚ではさんでやろうとしました。
「ああっ、いけない!」
と、青江が叫んだときには、もうすでにおそく、彼の両手は綱の上をすべっていきます。小浜兵曹長の両脚は、かいもなく、なんにもない虚空《こくう》をはさみました。
その声が、青江の耳にはいったころには、青江の両手は、綱のはしからするりとぬけていました。
(あっ、青江が綱をはなした!)
小浜兵曹長の目の前は、急にくらくなった思です。
「青江、青江、青江!」
兵曹長は、のどもはりさけるような声で、こんかぎりに青江の名をよびつづけました。しかし青江は。――
もうこの先を書く勇気がありません。
がんばりやだった青江三空曹の最期!
墜落
1
あれほどがんばりやだった青江三空曹も、鬼神ではなかったので、力も根《こん》もつきはて、ついに尊《たっと》い犠牲《ぎせい》となりました。
「ざんねん、ざんねん」
と、部下の気の毒な運命を思って
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