、小浜兵曹長の胸はつぶれる思です。
しかし彼は、ゆっくり涙を出しているひまもありません。なぜならば、綱にぶらさがっている彼も、やがて青江のような運命を迎えねばならぬことがよくわかっているからです。腕はぬけそう、体は風にもぎとられそうです。怪塔王のにくい顔が、こっちをのぞいて笑っているのが見えるようです。
「おのれ怪塔王、おれまで、ふりおとそうというのか。冗談いうな、おれは小浜兵曹長だ。だれが貴様をよろこばせるためにふりおとされてやるものか。なにくそ!」
帝国軍人がこんなことで二人ともふりおとされてどうするものか、わが海軍の名誉のためにも、死んでもこの綱ばかりは放さないぞと、兵曹長はいきばっています。
兵曹長がつりさがっている綱は、さかんにぴゅうんぴゅうんとふれています。飛行機は綱よりも上空にありますが、今は誰も操縦していませんから、ぐるぐるまわりながら、綱もろともしだいにおちていきます。
「うむ、誰がふりおとされるものか」
そのうちに綱のふれ方がゆるやかになりました。綱と飛行機がもろともに下におちだしたので、ふれ方がゆるくなったのです。兵曹長の腕は、すこし楽になりました。
し
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