ができませんでした。
「そうだ、錨のさきに、こっちの麻綱をひっかけるんだ。早くしろ。しかしうまくやれよ」
 小浜兵曹長は、はげますようにいった。
「はい。やります」
 青江三空曹は頼もしい語気で、言葉すくなに答えた。そして、操縦桿をさらに手前へひいたのでした。
 機はぐっと傾いた。
 錨はふわりと機首のところをとびこえて、うしろの方へながれました。
 空中の投綱だ
 なんというむずかしい曲技でしょう。
 小浜兵曹長は、窓にかじりついて、窓外を夢中になってながめています。
 錨をさきにつけた麻縄と、彼が機体からくりだしている麻縄とが二本ならんでみえる。
「うむ、もうすこしだ! おちついて、しっかり、そして大胆に!」
 小浜兵曹長は、もうたまらなくなって、伝声管を通じて、操縦士の青江三空曹に声援です。
 青江三空曹は、それにはこたえなかった。操縦桿をにぎる彼は、そのとき緊張の絶頂にあったのだ。彼の目も、耳も、心も、反射鏡に映る錨と麻綱のほかに、なにも見えず、聞えず、感じなかったのです。
 錨と麻綱とはだんだん近づいて来ました。
「もうすこしだ。青江、しっかりやれ」
 ぴしり!
 空中で錨と
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