きの帆村のおどろきは近頃にないものだったが、では生きている怪塔王の体はどこにあるのかと思って、あたりをみまわしたところ、その寝台の上からすうすうという寝息が聞えるので三度びっくりしました。
 寝台を見ると、寝具はたしかに人間の体のかたちにふくれていた。しかし彼は頭を毛布の中にすっぽりうずめていました。
「さては、――」
 と、帆村ははやくもぴーんと感じて、勇気をふるって寝台に近づくと、その下にある人の顔をのぞきこもうとして、そっと毛布をもちあげました。
「いまのが怪塔王のマスクであるとすれば、ほんとうの怪塔王はどんな顔をしているのであろうか」
 はやく見たいという気持と、おそろしい気持とがごっちゃになって、帆村の胸をゆすぶった。――が遂に彼は見ました!
 彼は見ました! 彼は溜息をつきました。
 その寝台の上に寝ていた怪塔王は、顔を下にむけて寝ていたのである。帆村の目にうつったのは、赭茶《あかちゃ》けた毛と白髪とが交っている、中老人らしい後頭部を見ただけでありました。
 叩きおこして、顔を見てやろうか。
 そうおもった帆村だったが、ついにそのことは思いとどまった。ここで怪塔王に目をさま
前へ 次へ
全352ページ中142ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング