帆村荘六も、このマスクを怪塔王の寝所《しんじょ》の傍《かたわら》に発見したときは生首《なまくび》が落ちている! と思って、どきっと心臓がとまりそうになったほどである。しかもその生首は、外ならぬ怪塔王の首であったではないか。おどろきは二倍になった。
 だがよくおちついて視察[#「視察」はママ]すると、生首とおもったのは、じつに巧妙なゴム製マスクであるとわかった。そのマスクも、普通のマスクやお面のように顔の前面をかくすばかりのものでなく、耳も、首も、頭部もすっかり隠してしまうし、頭髪さえちゃんと生えているものだった。ちょうど、人間の手をすっかり隠してしまう手袋のような式に、喉《のど》のあたりから上をすっぽり包んでしまう別製マスクであった。それは質のいい生ゴムでつくられてあり、例の汐《しお》ふきのような顔になっており、そして生ゴムの表面は渋色に染めてあった。マスクの合わせ目は、耳のうしろの頭髪の中にあって、このごろよく見かける噛《か》みあわせ式の金具の、特に小さくこしらえたものでかんたんに縫ったり裂いたりできるのであった。

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 怪塔王の巧妙なマスクを、三階の寝所で発見したと
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