王は、いたいたしい声でもって叫びました。
「あれを返してくれるなら、なんでも、貴様の言うとおりにする」
 そう言って、『声』の怪塔王は、両手を頭の上に高くあげて、しずかに『顔』の怪塔王の方へ近づいて来ました。
『顔』の怪塔王は、それを見て満足そうにほほえみました。相手は降参したのです。
「さあ、ここへ来い。このうしろへはいれ」
 と、階段のものかげを指さしました。
 顔を風呂敷で隠した『声』の怪塔王は、はじめの勢《いきおい》もどこへやら、いまはしょんぼりとして『顔』の怪塔王の言いなり放題になっています。なにが彼をそうさせたのでしょうか。それはもちろん、この怪塔が海中につかりきりだと、あとしばらくして爆発し、彼も死んでしまわねばならぬのをおそれての上のことです。
『顔』の怪塔王は、いきなり、『声』の怪塔王の両手をうしろへ縛《しば》りあげてしまいました。
「あれは本当に返してくれるのだろうね」
 と、『声』の怪塔王はまた念をおしました。

     5

 水中にながくつかっていると、怪塔は爆発するかもしれないというので、さすがに命のおしくなった『声』の怪塔王は、いまや『顔』の怪塔王に降参
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