った」
 そういって塩田大尉は、機械のこっちから大利根博士の名をくりかえしよんでみましたところ、三度目になると、はたして蓄音機の中から(ああ、うるさい……)と、博士の声がとびだしてきました。一彦はおどろいて、目をまるくするばかり。――

     4

 大利根博士の研究室に、博士の姿はどこにもなくて、ただ博士の声が飛出して来る蓄音機だけがあったのです。
 じつになんという変な仕掛でしょう。
 一体この変な仕掛は、なんのためにこうして博士の室内につくられてあるのでしょうか。またこの仕掛をつくったのは、誰なのでありましょうか。
「どうも変ですね。塩田大尉、これはきっと博士が人と口をきくのがいやなので、こんな仕掛で、来る人をみなおっぱらっているのではないでしょうか」
「うん、一応はそうも考えられるね。だが一彦君、一方ではこういうふうにも考えられはしないだろうか。つまり、大利根博士は、この研究室にたてこもっていると見せかけるため、わざわざこうした仕掛をしておいたとね」
 なるほど、そういう場合もあるだろうと、一彦は大尉の考えに感心しました。
「でも、博士ともあろう人が、なぜそんなややこしいこ
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