ああ、こんなことをやっていたんだ。おい一彦君はやくこっちへ来てごらん」
 と、塩田大尉はけむりの向こうから、大声でさけびました。
「え。なんですって」
 塩田大尉がなにかかわったものを見つけたらしいので、一彦少年は、胸をわくわくしながら、そこへかけつけました。
 すると大尉は、テーブルのうえにのっている蓄音機のようなものを指さしていました。
「これ、なんでしょう」
「おお一彦君。これは蓄音機だよ。しかし普通の蓄音機とちがう。これはね、こっちから大利根博士の名をよぶと、ひとりでに音盤が回りだして、蓄音機から声が出る仕掛になっているんだ」
「えっ、なんですって」
「君にはわからないかねえ。つまりこの室内に大利根博士はいなくて、そのかわりにこの蓄音機が仕掛けてあったんだ。入口の外で博士の名を三度よぶと室内では音盤がまわりだして、“研究中だ、会わないぞ、帰れ帰れ”などと博士の声が、この蓄音機から聞えてくるのだ。だからこれを聞いた者は、室内に博士がいるのだと考える。ほんとうはこのように博士は留守なんだ。誰がこしらえたのか、たいへんな仕掛をこしらえてあったものだ。も少しで、うまくひっかかるところだ
前へ 次へ
全352ページ中130ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング