博士の言葉が、いつも同じ文句だということだ。まるでゴム判をおしたように、“ああ、ああ、うるさい”などと、同じことをいっているのだ」
「それがどうしたのです」
「一彦君、おどろいてはいけない。博士は留守なのだ。博士はこの部屋の中にはいないのだよ」
2
博士は留守だ――と、塩田大尉は、意外なことをいいだしました。
「だって、それは変ですね」と一彦は腑《ふ》におちぬ顔です。
「だって、この扉の中で、大利根博士が“今日はだめだめ、帰ってくれ”などと、いまさっきも喋ったではありませんか」
一彦には、塩田大尉の言葉がどうしても信じられません。
塩田大尉は、ますます顔を赤くして、心臓のわくわくするのをじっとおさえつけている様子です。
「一彦君。私の考えはきっとあたっているよ。大利根博士は留守なんだ。この私の言葉にまちがいのないということを、これから見せてあげよう」
塩田大尉は、この扉のなかに、大利根博士がいないということを一彦に見せてやろうというのです。一彦はたいへん不思議におもいました。彼はあくまで、それは塩田大尉のおもいちがいだと思っていました。
塩田大尉は、ポケットのな
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