、部屋の中はしずまりかえっています。
「ああ、もしもし、大利根博士!」
 三たび大尉は、扉の前で叫びました。さっき電話をかけたとき、[#「電話をかけたとき、」は底本では「電話をかけたとき、、」]話はよく聞きとれなかったが、博士か誰かわからぬが低い声で返事をした者がありましたので、大尉の声を、せめてその者でも聞きつけて出て来そうなものだとおもったのです。
 ちょうどそのときでした。扉の向こうから怪しい声がきこえてきたのは。――

     5

 扉の向こうで、はじめて人の声がきこえました。
「ああ、ああ、うるさい。わしは研究中だ。誰がきても会わんぞ。今日はだめだめ。帰ってくれ」
 博士は嗄《しわが》れ声でどなるようにいいました。
 塩田大尉と一彦とは、顔をみあわせました。
「博士はいるのですね」
 と一彦は小さい声で塩田大尉にささやきました。
「うむ、博士はやっぱりこの中に居られたね、ふふむ」
 と大尉はなにか意外な面持《おももち》で、ひとりで感心していました。大尉は博士が留守のようにおもっていたらしくおもわれます。
「塩田大尉が来たということが、はっきり博士の耳に通じないのですよ。も
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