に動くのを感心しながら言いました。
「うん、これかね。これはわしの大得意な竹法螺《たけぼら》じゃ」
「竹法螺って、なにさあ」
「お前は竹法蝶を知らないのか。こいつはおどろいた。まあ見ているがいい」
 そう言ってお爺さんは、五十センチほどの長さに切った竹筒に、しきりと細工《さいく》をしていましたが、やがてにっこり笑い、
「さあ、竹法螺が出来たぞ。これならよく鳴りそうだ」
 と、竹法螺を唇にあて、はるかふもと、村の方をむきながら、ぷうっと大きな息をふきこみました。
 ぷーう、ぷーう、ぷーう、ぷーう。
 竹法螺は、大きな、そしていい音色でもって、朗々と鳴りだしました。その音は山々に木霊《こだま》し、うううーっと長く尾をひいてひびきわたりました。
「ああ、いい音だなあ」
 一彦少年は、傷のいたみをわすれて、お爺さんのふく竹法螺の音に聞きほれました。
 お爺さんは、いくたびもいくたびも竹に口をあて、頬《ほっ》ぺたをゴムまりのようにふくらませ、長い信号音をふきつづけていましたが、
「さあ、このくらいやれば、村の衆の耳に、この竹法螺の音がはいったろう」
「お爺さん、今の竹法螺を聞きつけて、村の人がこ
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