て、まるで戦場のようなさわぎになってしまいました。
「おお一彦君にミチ子ちゃんじゃないか。どこに行ったのかと思って、おじさんは心配していたところだよ」
 そういう声とともに、兄妹の肩をやさしくたたいた人がありました。
「あっ、帆村おじさんだわ。おじさん、いつここへいらしたの」
「ああおじさん、とうとうやって来たねえ。僕、なんだかおじさんが来るような気がしていたよ」
「ああそうかそうか」
 おじさんはにこにこ顔です。
 兄妹のおじさんて、誰だか皆さん御存じでしょうね。あの有名な青年探偵の理学士帆村荘六氏です。
「ねえ、おじさん。あの軍艦が坐礁したり、檣《ほばしら》が曲ったことについては、なにか恐しいわけがあるんだろう」
 と、一彦が遠慮のない問をかけますと、帆村探偵は口をきゅっと曲げて、
「うん、それについて君たちの力を借りたいことがあるんだよ。君たちは、向こうの丘の上に建っている塔のことについて、なにか知らないかね」
 といって、帆村ははるか向こうを指さしました。
「おじさん、塔って、どこにあるの」

     2

「どこといって、あの塔のことさ。ここから大分とおいから、君たち気がつ
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