機の偵察機が、はなればなれになって、九十九里浜の上空を、いつまでもぶんぶんと飛びまわるのでありました。
「ははあ、上空からこのへん一帯を警戒しているのだよ」
「兄さん、たいへんなことになって来たわねえ」
ミチ子は目をまるくして、一彦の腕をしっかとおさえていました。
しかし、まだこの浜べのさわぎは、ほんの始りだったのです。おひるごろになると、どこから来たのか、駆逐艦《くちくかん》だの、変な形をした軍艦とも商船ともわからない船だのが、およそ十|隻《せき》ほども集ってきて、沖はなかなか賑《にぎ》やかになりました。
帆村探偵
1
さわぎはますます大きくなって、午後になると陸戦隊がボートにのって、浜べにつきました。そしてただちに警戒につきました。
沖合には、坐礁《ざしょう》した大戦艦淡路が傾いており、そのまわりには大小いろいろな軍艦がぐるっととりまき、空には尻尾《しっぽ》を赤く塗《ぬ》った海軍の偵察機が舞い、それを背景にして、浜べには陸戦隊が銃剣をきらめかして警戒をしているのです。
しずかなほんの漁村にすぎなかったこの海べの村は、一夜のうちにたちまち姿をかえ
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