陸戦隊が地上を一生懸命さがしますが、そこには塔のかげもかたちもなかったというのも、この怪塔が地面の下におりてしまったためです。塔の屋上は砂原を帽子にしてかぶったような有様になっています。ですから塔の頂上が地面のところまで下りますと、あたりの砂原と見わけがつかなくなります。そこへ風が吹いてきて、あっちへ、こっちへと砂をふきとばせば、いよいよ塔が埋まっていることがわからなくなります。
怪塔の秘密の一つは、こうして帆村探偵のあたまのはたらきで解けました。
怪塔王がそれと知ったら、さあ、なんと思うことでしょうか。
3
「じゃあ、帆村おじさん、この土を上へ掘っていくと、地上に出られるわけだね」
と一彦が、塔の出入口のそとに見える土壌をゆびさしました。
「それはそうだが、ちょっと掘るというわけにもいかないね」
といっているところへ、突然二人の頭の上で、破鐘《われがね》のような声がとどろきました。
「わっはっはっ、もういいかげんに、話をよさんか」
そういう声はまぎれもなく、高声器から出る怪塔王のあのにくにくしい声でした。
「やっ、また出てきたな、怪塔王、声ばかりでおどかさずに、ここまで下りてきたらどうだ」
と、帆村探偵がやりかえしました。
「ふふふふ、なにをいっとるか、この青二才奴《あおにさいめ》が。しかし貴様は、塔が地面の中にもぐったことをいいあてたのは感心じゃといっておくぞ。しかし、この塔の威力はたったそれだけのことではないぞ。こいつは貴様も知るまいがな。いや、なにかといううちに、貴様たちを片づけるのが遅くなったわい。どれそろそろとりかかるとしよう」
気味のわるいことをいって、怪塔王の声はぷつりと切れました。
「おじさん、怪塔王が僕たちせ片づけるってどんなことをするの」
と、一彦は心配そうに聞きました。
「なあに、たいしたことはないよ。おじさんだって男一匹だ。そうむざむざ殺されてたまるものか」
といっているところへ、いつ現れたか二人の背後に、怪塔王がすっくと立っていました。
「わっはっはっ、もう二人とも、死ぬ覚悟はついたかな」
「なにを――」
と、帆村はふりむきざま、たくみにピストルの引金をひき、ぱんぱんと怪塔王をねらいうちしましたが、例の強い防弾力がきいていると見え、一向《いっこう》怪塔王にはあたりません。
4
「うふふふ、わしの体に、そんなピストルのたまがはいるものかと、さっき教えておいたじゃないか」
と、怪塔王はにくにくしげに笑いながら、すこしずつ帆村と一彦の方にすり足で近よってきます。
帆村は、もう駄目だとは思いましたが、それでも一彦だけはなんとか助けたいものと、うしろへかばっています。怪塔王が一歩すすめば、彼もまた一歩うしろにしりぞきます。そうしてじりじりと怪塔王におされていくうち、とうとう二人は壁ぎわへ、ぴったりおしつけられてしまいました。
「さあ、いくぞ!」
怪塔王はいきなり大声をはりあげると、隠しもっていたフットボールほどの球を、頭上たかくさしあげました。
「これは殺人光線灯だ。貴様たち、今このあかりがつくのを見るじゃろうが、その時は、お前たちの最期だぞ。わかるじゃろう。そのときは殺人光線が貴様たちの全身を、まっくろこげに焼いているときじゃ」
ああ、あぶないあぶない。殺人光線灯のスイッチを入れると、すぐにそのあかりはつきましょう。そうなれば帆村も一彦もくろこげになって死ぬというのですから、二人の命は、もはや風の前の蝋燭《ろうそく》とおなじことです。
(どうしよう?)
と、一彦は帆村にしがみつきました。帆村は彫刻のようにかたくなって、怪塔王をにらみつけています。
「ちょっと待て」
と、帆村は怪塔王に声をかけました。
「なんだ、青二才、命がおしくなったか」
「いや、お前こそ気をつけろ。いま時計を見ると、丁度《ちょうど》この塔へむかって、わが海軍の巨砲が砲撃をはじめる時刻だ。お前こそ命があぶないのだぞ」
「えっ――それは本当か」
「本当だとも。そんな手筈《てはず》がついていなければ、僕たちのような弱い二人で、なぜこんなあぶない塔の中へはいりこむものか」
5
怪塔が軍艦淡路から砲撃されると聞かされ、怪塔王はおどろきました。
「ああ砲撃される。そいつは気がつかなかった」
そういったおどろきの言葉は、ほんとうに怪塔王の腹の底から出たものと見えました。
帆村と一彦とをそこにのこしたまま、怪塔王はあわてふためき、階上にかけあがってしまいました。
怪塔王はいま三階の自室にかえって、しきりに妙な機械の中をのぞいています。それは巧妙な地中望遠鏡でありました。地中にいてそれで地上がよく見えるという機械でありました。
これは潜水艦の潜望鏡みたいなもので、光の入口は
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