。
「あっ、ロケットだ。ロケットが、島へかえってきた」
「えっ、ロケットが、島へかえってきたって」
大利根博士もつづいて窓のところによりました。なるほどまちがいなくロケットです。西太平洋の空中で、秘密艦隊のためにあべこべ砲で手きびしくやっつけられたロケット隊の生きのこりの一台です。
「おお、あれは隊長ののっているロケットだ」
大利根博士は、おもわず、そうさけびました。
「えっ、隊長機? 隊長とは、誰のことですか」
兵曹長は、博士の言葉をききとがめて、たずねました。
「隊長機――というのは、つまり怪塔王の部下で一番えらい奴が、隊長としてのりこんでいるロケットだ――どうだね、小浜君、あのロケットが着陸するのを待ってとり押さえては――」
光るロケット
1
隊長機のロケットを、とり押さえてはどうだと、大利根博士|実《じつ》は怪塔王からいわれて、小浜兵曹長は大きくうなずき、
「そうだ。よろしい、あのロケットをとり押さえよう。これはすばらしい獲物だ」
いつ、どんなときにも、おそろしいということをしらぬ勇士小浜兵曹長は、この白骨島に不時着このかた、ちょうど腕がなってしかたがないところでありましたので、怪塔王にいわれるままに、ロケットを分捕《ぶんど》ってしまう決心をかため、階段をかけおりました。
「どちらへお出かけになりますか」
と、黒人が心配そうにたずねました。そのとき怪塔ロケットは、悪いところが直って、まもなく出発できるようになっていました。ですから、黒人は、兵曹長からの約束で、いよいよ体を自由にしてもらえるときがちかづいたとよろこんでいたところでありました。
「いま、着陸するロケットがあるから、あれを分捕ってくる。ちょっと待っておれ」
「は、そうですか」
といったものの、黒人は、小浜兵曹長があまりに大きなことをいいだしたのにびっくりして、あとはいいだす言葉も見つかりません。
「じゃ、ちょっと待っているんだぞ」
といい捨てて、小浜兵曹長は外にとびだしました。
そのとき、兵曹長の耳をきこえなくしてしまいそうに、ロケットの尾からふきだすガスのはげしい音! それとともに、あたりはもうもうとした白い煙のようなもので、すっかりおおわれてしまいました。兵曹長は、ロケットを見失ったかと思いましたが、そのとき、ひゅうっと、一陣の風もろとも、灰色のロケットの巨体が砂をけちらしながら、四五百メートル先の草原に着陸しました。
「おのれ、分捕ってくれるぞ」
兵曹長は、猟犬のようにかけだしました。
2
ついに、生きのこりの隊長機のロケットが、着陸したのです。小浜兵曹長は、そこまで四五百メートルの間を、一秒でもはやくかけぬけようと大地をけったそのとたん、
「おやっ、あぶない。これはいかん?」
とさけぶなり、兵曹長は、だあっと地上にうちふしました。
だだだぁん、どんがらからから。
ものすごい光が見えたとおもうと、たちまち天地もくずれるような爆音です。ひゅうっばらばらと風をきってとびくるのは、爆弾の破片でありましょう。兵曹長は、いちはやく、頭上からおちてくる爆弾に気がついたので、その破片にやられないため、地上にからだをふせたのです。
ものすごい爆撃は、なおもつづきます。一体どうしたことでしょうか。
実は、それは隊長機の最期の場面だったのです。隊長機は、ずいぶんがんばって、秘密艦隊やその空中部隊と、戦《たたかい》を交えましたが、あべこべ砲のためついに自分がひどくやっつけられ、その生命とたのんでいた磁力砲がこわれ、使えなくなりました。それでも逃げるだけ逃げようと、根拠地の白骨島へ着陸したとき、追跡してきた空中部隊のためさんざんな目にあわされました。
磁力砲がこわれてしまえば、もうそのあとは爆弾や砲弾をはじきかえす力がなくなりました。そこをねらって、わが空中部隊は、爆弾の雨をふらせたのです。
小浜兵曹長は、あぶない一命をたすかりました。そのとき彼のあたまの中には、もう一つのロケットのことをおもいだしました。
兵曹長がふりかえったとき、煙の間に、眼の底にやけつくようにはっきりみえたのは、怪塔ロケットの出発のありさまです。
ばばぁん、ばばぁん。
「あっ、しまった。待て!」
といったが、もうおそい、怪塔ロケットは隊長機といれかわって、大空にとびあがりました。
3
「黒人のやつ、降参したようにみえていたが、とうとう俺をだまして、怪塔ロケットでにげてしまったか」
小浜兵曹長は、無念のあまり、腹ばいながら、いくたびか大地をうちましたが、もはやどうにもなりません。
しかし、みなさんは、すでにおわかりになっているとおもいますが、怪塔ロケットを俄《にわか》に出発させたのは黒人ではなく、大利根博
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