士だったのです。博士は、そのようなときがくるのを待っていたのです。しかも、ぐずぐずしていれば、秘密艦隊の爆撃のそば杖をくわないともかぎりません。
だだだーん、ひゅーっ、どどどん。
地上からは、半ば壊れながらも、隊長機が、しきりに空中にむけて、砲弾をうちあげています。敵ながらあっぱれの隊長機でありました。それに応じて、わが空中部隊も、ここを先途《せんど》といさましい急降下爆撃をくりかえします。地上は硝煙《しょうえん》につつまれ、あたりはまっくらになりました。
「これは、すごいことになったぞ」
こうなると、兵曹長も、これから先、自分の運命がどうなるのか、まったくわからなくなりました。あとからあとへつづけざまの爆裂、雨のようにとびくる爆弾の破片、それらはあまりにはげしく、兵曹長は、一時怪塔ロケットをとりにがした無念さをわすれるほどでありました。
それから何分かたって後のことです。
地上にあった隊長機は、ついに一大音響をあげて爆発しました。そしてロケットは、一団の火の塊《かたまり》となり果て、その焔《ほのお》は、えんえんと天をこがし、すさまじい光景となりました。
この大爆発のため、小浜兵曹長は、ついに体に二つ三つ傷をうけたらしく、ひりひり痛みだしました。が、しらべてみると幸いにかすり傷ばかりでありました。どこまでもつよい武運によろこんだ兵曹長は煙の中から、すっくと立ちあがりました。
4
小浜兵曹長の無念さといったら、なににたとえようもありません。せっかく占領した怪塔ロケットがいつの間にやら兵曹長をあとにのこして、空中へとびあがってしまったのです。硝煙にむせびながら、兵曹長はいくたびとなく空中を見あげましたが、そこには、怪塔ロケットの姿がなく、ただロケットの怪奇な響だけが、ごうごうときこえます。
「なんのことだ。とうとううまく逃げられちまった。ざんねん!」
兵曹長は、痛手に屈せず、立ちあがりました。このうえは、空中へ信号をして戦友に対し、自分や帆村がこの島にいることをしらせたいとおもいました。そこで、帆村のいる丘の上へのぼるのが一番いいと思って歩きかけたとき、とつぜん、煙の中からとびだして来た一人の人物がありました。
「おお、小浜さん」
小浜さんとわが名をよばれて、兵曹長は、はっとその方を見ました。
「やあ、帆村さん、まだ爆撃中だから、あまりうごくとあぶないよ。どうして、あなたは、こんなところへ?」
帆村探偵は、全身ずぶぬれです。
「いや、えらい目にあいました。この上の洞窟の中でね。例の大利根博士にあったんですが、博士のために、すでに一命をおとすところでしたよ」
「ああ大利根博士、博士なら、さっきここへも来たが。――」
「えっ、博士は来ましたか。そして、博士はどうしました。小浜さんは、なんの危害もうけなかったのですか」
そういわれて、兵曹長は、いまいましそうに舌うちをしました。
「やられたよ、うまくやられてしまった。せっかく怪塔を占領していたのに、博士が来て、うまいこといわれて俺は外へとびだした。すると待っていましたとばかり、怪塔は空へとびだしてしまったよ」
意外な通信筒
1
硝煙のあいだに、ふたたび手をとりあうことのできた帆村探偵と小浜兵曹長とは、たがいに勇気百倍のおもいです。
「小浜さん、これから、どうしますか」
「それはわかっている。あくまで怪塔王をやっつけるのさ。そして、この根拠地をすっかり占領してしまうのさ」
「わかりました。では、われわれはさしあたりなにをすればいいのでしょうか。戦《たたかい》は空中で始っています。それなのに、われわれには、飛行機もなければロケットもない。これでは、空中にとびあがろうとおもっても、できないのが残念ですね」
「うむ、さっきから、それを残念がっているところだ。ああ、われに一台の飛行機があれば、怪塔王をどこまでも追撃するんだがなあ」
と、小浜兵曹長も、両腕をさすってくやしそうです。飛行機のない航空兵、そして空中には壮烈な空中戦がひきつづきおこなわれている。まったく、兵曹長の心のうちは気の毒でありました。
そのときでありました。硝煙わきたつ島上に、にわかに猛烈なプロペラの音が近づいてまいりました。
「おい帆村君、敵か味方かわからんが、低空飛行でもって、こっちへやって来るやつがいる。はやくそのあたりへ体をかくすがいいぞ」
「あ、わかりました」
といっているうちに、硝煙をやぶって、二人の頭上に近づいた数台の飛行機がありました。
「あっ、味方の攻撃機だ。あぶない、体をかくせ」
いちはやく兵曹長は、飛行機の種類を見きわめて声をあげました。機翼にあざやかにえがかれている日の丸! たしかにそれは味方の攻撃機です。しかし、この低空飛行はなぜで
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