たくさん集ってきました。そうしてモーター焼切りの犯人を探しにかかりました。
「どうじゃ。まだ見つからんか」
と怪塔王は、じりじりしています。
「ああ、警報ベルが鳴っています。先発隊からの無電報告らしいですよ」
別の黒人が、怪塔王のところへ駈けてきました。
「ちぇっ、日本軍といま戦《たたかい》をはじめるというときになって、こんなさわぎがおこるなんて、なんというまずいことだ。おい、わしは戦況をきいているから、はやく悪者をさがしだすんだぞ」
あまりのいそがしさに怪塔王は、体が一つしかないことを、どんなにか不便に思ったことでしょう。
「もしもし。わしだ。どうだ戦況は?」
すると向こうから返事があって、
「ああ団長ですか。日本軍はいますっかりわがロケット隊をとりまきました。上へあがれば、敵の飛行隊がいますし、下へおりれば敵の艦隊がいます。そして今前方から大型の飛行機が三十機ほど、ものすごいスピードでこっちへ向かってきます」
と、これは副司令に任命した団員の報告でありました。
「なんだ。そんなに日本軍に圧迫せられてはしようがないじゃないか。すぐさまわが無敵磁力砲でもって、どんどん日本軍の飛行機や軍艦をやっつけろ。ぐずぐずしていて、こっちの白骨島へ攻めこまれると、ちょっとやっかいなことになるじゃないか。はやく磁力砲をぶっぱなせ」
「ええ、その磁力砲ですが、その磁力砲がどうも……」
「なんだ。なにをいっている。磁力砲がどうしたと? はやく話せ」
怪塔王の顔が、またさっと青くなりました。
「はい、磁力砲が、ちと変な工合でございまして……」
4
「磁力砲が、ちと変な具合だって? おい、それは本当か。はやくくわしいことを話せ!」
怪塔王は、おもわずマイクにしがみつきました。さきにはモーターが故障で、いままた磁力砲の具合がわるいとは、泣面《なきつら》に蜂がとんできてさしたように、災難つづきです。
「いや、実はさっきから磁力砲をさかんにうっているのでございます。が飛行機や軍艦が、それにあたってとろとろと溶けるかとおもいのほか、どうしたものか、敵は一向《いっこう》平気なのでございます」
「そんなばかな話があるものか。きっと磁力砲の使い方がわるいのだろう。あれだけ教えておいたのにお前たちは駄目だなあ」
「いや、私どもは、まちがいなく磁力砲をうっています」
「まちがいなくうって、相手の飛行機や軍艦がどうかならぬはずはない。たちまち赤い焔《ほのお》をあげてとけだすとか、うまくいけば、一ぺんに爆発するとか」
「あっ、困った。敵機がすぐそばまでやってきたそうです。いよいよ死ぬか生きるかの戦闘をはじめます。報告はあとからにいたします。ちょっと無電をきります」
「よし、しっかりやれ。わしは懸賞を出そう。飛行機を一機おとせば、二千円やる。軍艦なら一隻につき一万円だ」
その返事は、ありませんでした。副司令は、日本軍と戦闘をはじめたのでしょう。どうなるのでしょうか。戦に勝つか負けるか、怪塔王は気が気でありません。
「ちょっと至急、おいでをねがいます」
とつぜん耳もとで、ルパシカ男の声がしました。
「なんだ。モーターをこわした悪者をひっとらえたか」
「いや、そうではございません。あのう、縛っておきました小浜兵曹長がおりません」
「なんだ、あの日本軍人がいないのか」
「それからもう一つ、驚くべきことがございます」
5
「もう一つのおどろくべきことって、それは一体なんだ」
怪塔王は、かみつくような顔をして黒人にききました。
「はあ、それは――それは第三機械筒の中につないでおいた帆村探偵がいなくなったのでございますよ」
「えっ、帆村が、第三機械筒の中にいないって。それじゃ第三機械をうごかす者がいないではないか」
「はあ、そうでございます」
「そいつは困った。なにもかもめちゃくちゃだ。このロケットは死んでしまったも同じことだ。戦を目の前にして、とびだせないなんて、こんな腹立たしいことがあろうか」
怪塔王は、どすんどすんとじだんだをふんでくやしがりました。
この話によると、帆村探偵はこの怪塔ロケットの第三機械筒につながれ、その機械をうごかす役をあたえられていたことがわかります。これは勿来関の上空で、わが海軍機と戦っているうちに黒人の一人が死んだのです。そこでその黒人にかわり、かねて捕えられていた帆村荘六がむりやりに第三機械筒の中に入れられ、その機械をうごかす術をむりやりに教えこまれたのでありました。
かしこい帆村は、筒の中につながれていると見せかけ、じつはいつの間にか筒を自由に出入りできる身になっていたのです。
小浜兵曹長を海底牢獄からすくいだしたのも彼ですが、兵曹長を山の上にかくしておいて、その夜また行くつもりでいたところ、怪塔
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