えて、どこの国の飛行機かわかるだろうに」
「そうですね――いやわかりません。あんなかっこうの飛行機を、今まで見たことがありません」
「日本の飛行機ではないのか」
「いや、今まであんな飛行機が日本にあったように思いません」
「一体、飛行機の数は、どのくらいいるのかね」
「機数は、すっかり数え切れませんが、ちょっと見たところ百五十機ぐらいはいるようです」
「そうか。百五十機の怪飛行隊か――そうだ。おいお前一つその飛行機の編隊の中へとびこんでみろ。すると向こうではどうするか。向こうから撃ってくれば、こっちも撃ってよろしい。その間に、敵の正体をたしかめて、すぐ無電でしらせろ」
「はい、わかりました。では、これからすぐあの編隊を追いかけましょう。こっちが全速力をだせば、あと一時間で追いつけるとおもいます」

     3

 北上するマークなしの飛行編隊は、そもそもどこの国の飛行隊でありましょうか。
 怪塔王は、その飛行大編隊が、なにを目あてにしているかが、たいへん気になりました。なんだか、いまに自分たちがいる白骨島へ攻めよせてくるように思われてなりません。
 そうこうしているうちに、怪塔王の前に、また別の警報灯がつき、つづいて警鈴が鳴りはじめました。また別のところから、至急無電なのです。
 怪塔王は、ぎくりと驚きました。
 受話器をとりあげてみると、これはやはり怪塔王の配下の監視船が発した警報でありました。
「報告。ただいま鹿島灘《かしまなだ》上を、夥《おびただ》しい艦艇が北東に向け、全速力で航行中です」
 これをきいて、怪塔王はとびあがるほどおどろきました。
「なんじゃ。こんどは夥しい艦艇が、北東へ全速力でもって走っているというのか。どうも気になる方角だ」
 鹿島灘から北東へ線をひいて、それをずんずんのばしていきますと、やがて白骨島の近くへとどきます。その線上を走っているのは、夥しい艦艇だといいます。
 それより前、監視機の方は、マークなしの飛行大編隊が、小笠原群島の上を北にむけて飛んでいるのを発見して知らせてきましたが、その後の報告によると針路はやや東に曲り、白骨島を目あてにしていることがだんだんにわかってきました。それもそのはず、いよいよ怪塔王軍に対して、いさましい戦《たたかい》をはじめるため、わが秘密艦隊が出動したのでありました。
 秘密艦隊には、空軍部隊と艦隊とがありましたが、両者は白骨島のすこし手前で一しょになることにしめしあわせてありました。
 塩田大尉と一彦少年とは、艦隊旗艦にのっていました。そして艦の見張番の知らせをいつも注意していました。

     4

 怪塔王は、秘密艦隊の襲撃を、やっとさとりました。
「ううむ、なまいきな日本海軍め、海と空との両方から、この白骨島を攻めようというのか。さてもわが巨人力を忘れてしまったと見える。よし、そうなれば、日本壊滅の血祭に、まずやっつけてしまおう」
 怪塔王は、すっかり憤《いきどお》ってしまいました。そして、すぐさま、怪塔ロケット隊に出動準備を命じました。
「おい、みんな。猪口才《ちょこざい》にも、日本の空軍部隊と艦隊とが、こっちへ攻めて来るぞ。あいつらが白骨島につかない先に、その途中でやっつけてしまうのだ。すぐさま全部出動準備をせよ」
 さあ出動準備だ!
 怪塔王ののっている怪塔ロケットをはじめ、その僚機の中へ駈けこむ怪しい人たち。
 梯子はまきあげられ、入口の扉や窓はすっかり閉じられました。
 つぎに、エンジンは、ごうごうと響をたてて廻りだしました。
 そのとき怪塔王のところへ中から電話がかかって来ました。
「おい、なんだ」
「ああ首領? たいへんなことになりました」
 そういう声は、第一号の黒人の声でありました。
「えっ、たいへんとは、何がどうしたのか」
「この間、方向舵をなおしましたですね」
「うん、なおした」
「あの方向舵が、今こわれてしまいました。ちょっとうごかしてみただけなんですが、あれをうごかすモーターから、いきなり火が出たと思ったら、それっきりうごかなくなりました。どうしましょうか」
「どうするって、そいつは困ったな。それでは出発できないではないか。一体、なぜモーターが焼けたりしたのか。お前がよく番をしていなかったせいだ。その罰に、お前を殺しちまうぞ」

     5

 いざ出動というときになって、怪塔ロケットの司令機が故障になったという騒《さわぎ》ですから、怪塔王はかんかんになって黒人をどなりつけました。しかし、故障のモーターは、そうかんたんになおってくれません。
「困ったなあ。おい、早くモーターがなおれば、お前を殺さないでゆるしてやるよ」
 怪塔王も困って、モーターをあずかっていた黒人に、ごきげんとりの言葉をなげました。
「えっ、モーターが早くなお
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