んだか訳のわからぬ機械が、いくつもいくつも壊れたままに積みかさねてありました。
「おじさん、これは何の機械だろうね」
と、一彦はそっと帆村の腕をひっぱって、たずねました。
「ふうん、この機械かね。はっきりわからないけれど、こっちにあるのは、電気を起す機械だし、それからまたあそこにあるのは、どう考えても圧搾《あっさく》空気を入れるいれものだねえ。そのほかいろいろなものがある。どれもみな壊れているようだ。なぜこんなものを集めてあるのかなあ」
と、帆村はふしぎでしかたがないという風に、頭をふりました。
そのうちに目にはいったのは、この円い缶詰《かんづめ》のなかにはいったような部屋の真中についている螺旋階段でした。
螺旋階段というのは、普通の階段のようにまっすぐではなく、ぐるぐるとねじれている狭い階段のことです。
二人はそれをつたって、二階へあがっていきました。
この二階もまっくらですが、懐中電灯で照らしてみますと、ここはたいへんきちんとしていまして、黒ぬりの美しい配電盤や、そのほか複雑な機械がずらりと並んでいました。
「ここは何をするところなの」
「さあおじさんにはわからないよ。しかしまるで軍艦の機関室みたいだね」
「塔の中に、軍艦の機関室があるなんて、変だね」
「うむ変だねえ。なにか訳があるのにちがいない――さあ、いよいよこの上に怪塔王がいる部屋があるのにちがいない。一彦、しっかりするんだよ」
と、帆村探偵は一彦をはげまし、三階につづく螺旋階段の手すりに手をかけました。
2
怪塔王の部屋は、いよいよこの階段を一つのぼれば、そこにあるのです。帆村探偵もさすがにのぼせ気味で、息づかいもあらくなってまいりました。一彦少年はというと、これは体をちぢめて、鼠《ねずみ》をねらう子猫のようなかっこうに見えました。
足音をしのばせながら、螺旋階段を一段ずつのぼっていく二人のひたいには、いつしかあぶら汗がねっとりとにじみでました。帆村の右手には、愛用のコルト製のピストルがしっかとにぎられています。一彦少年は、一たばの綱をもって、いつでもぱっと投げられるようにと身がまえをしていました。
まっさきに立っている帆村が、下をむいて手で合図をいたしました。
(おい一彦君、いよいよ階段をのぼりきるぞ。怪塔王はすぐそこにいるんだ。かくごはいいか)
と、いったような意
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