なると、きっと、窓は鉄の扉にとざされて、なかなかはいれないと思うよ」
「それじゃ困ったね。窓からは駄目だ」
「入口の扉をあける合鍵でもあればいいんだが……」
「鍵?」
そのとき一彦は、ふと猿の頭のついた鍵のことをおもいだしました。昨日怪塔王が砂の上におとしていったあの大きな変な形をした鍵のことです。
3
「そうだ、あの鍵があれば、入口があくかも知れない」
と、一彦はひとり言をいいました。
「なに、鍵だって? 一彦君は、あの入口の鍵をもっているのか」
と、帆村探偵は、おどろきの声をあげました。
そこで一彦は、今その鍵をもっているわけではないこと、しかし昨日一彦が変な鍵を砂の上で拾ったこと、そして間もなく怪塔王がひきかえしてきて、その鍵をもっていってしまったことなどを話しました。
「ああ惜しいことをした。その鍵があれば、今どんなに役に立ったかしれないのだが」
と、帆村探偵は残念そうにいいました。
一彦も、帆村探偵におとらず残念におもいましたが、そのときふと気がついたことがありました。
「ねえ、おじさん。鍵の形がはっきりわかっていると、それと同じ鍵をもう一つ作ることができるねえ」
「なんだって、鍵の形がわかっているのかね」
そこで一彦は、昨日それを持って遊んでいたときに、湿《しめ》った砂におしつけて、鍵の型をいくつも作ったことを話しました。そして、もしかすると、昨日遊んだところに、まだ鍵の型が一つや二つは残っているかもしれないといったのです。
それを聞いて、帆村探偵はとびあがってよろこびました。
「そいつはいいことを聞いた。ではこれからいって探してみようじゃないか」
二人は砂丘のかげからとび出すと、どんどんかけだし、昨日一彦とミチ子が遊んだ浜辺へやって来ました。
さいわい昨日は風も弱くて砂をとばさず、またそこは湿った砂地でありましたので、一彦の作った鍵の型は、あちこちにのこっていました。
「うむ、しめた。これなら合鍵が作れる!」
帆村は大喜びで、一彦の手をぐっと握りしめました。
4
帆村探偵と一彦は、一歩一歩怪塔の入口に近づきました。そしてもう一歩で、入口の扉に手が届くというところまで近づいたそのときでありました。突然あたまの上から、破鐘《われがね》のような声がおちてきました。
「こーら、誰だ。また二人づれで来やがったな
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