はこんなところにいつまでも、とまっていることはできない。われわれはできるだけはやい機会にこの国を脱出しなくてはならない。わしは、ずっとまえから、脱出の決心をして、いろいろとその方法を考えていたところだ。きみも、わしの気持はわかってくれるだろう」
「は、もちろんですとも」
「そこで、脱出に必要ないろいろなものを、われわれは手にいれたいのだ。その変調眼鏡もその中の一つだが、そのほかにいろいろ必要なものがある。じつは、何がこの国から脱出するのに必要なのか、その研究もまだじゅうぶんにできていない。これからみんなで手わけして研究しながら、必要な脱出道具を手にいれていきたい。これは表向きにいったんでは、手にはいらないことがわかっている。ついては、これから先、三根夫君の手によって、それをやってもらいたいと思うんだ。どうだね、きみの意見は」
「隊長にあらためて敬意をささげます。そのかたいご決心と、ねん入りなご準備のことをうけたまわって、わたしもうれしいです」
「じゃあ、その方針で進むことにしよう。これは非常に困難な事業だが、われわれは全力をあげて成功させなくてはならないんだ」
テッド隊長と帆村荘六の手は、しっかりと握られた。
計画公表
「怪星ガンから脱出するんだ」隊長のかたい決心は、ひそかに隊員全部に伝えられた。
「しかし、そのことは、あくまでガン人にはさとられないように注意をする必要がある」
もっともなことだった。怪星ガン人が隊員の待遇をたいへんよくしているのも、結局隊員たちをながくここにとめておきたいからなのであろう。だからもし、隊員がここから脱出する決意を知ったら、ガン人はきっと怒りだすであろうし、待遇はわるくなり、自由はうばわれるにちがいない。隊長が、隊員たちに極力秘密をまもるようにといったのは、もっともだ。
「みんなは、それぞれ、脱出にひつような知識をうることに気をつけていること」
捕虜生活に、気をくさらせていた隊員たちは、隊長の決心がわかったので、困難ではあるが、大きな希望をつかむことができた。だから隊員たちは、目に見えて元気になった。
ガン人の監視がないと思われる真夜中に、ねんのために変調眼鏡であたりをよくしらべたうえで、隊員たちはベッドから顔をだして、それぞれの脱出計画の意見を交換することがはやった。
「おれの考えでは、なんとかして天窓をあける
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