怪星ガン
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)矢木三根夫《やぎみねお》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)三角|棚《だな》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ばった[#「ばった」に傍点]のように
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臨時放送だ!
「テレ・ラジオの臨時ニュース放送ですよ、おじさん」
矢木三根夫《やぎみねお》は、伯父《おじ》の書斎の扉をたたいて、伯父の注意をうながした。
いましがた三根夫少年は、ひとりで事務室にいた。そしてニュースの切りぬきを整理していたのだ。すると、とつぜんあの急調子の予告音楽を耳にしたのだ。
(あッ、臨時放送がはじまる。何ごとだろうか)と、三根夫は椅子からとびあがって、テレ・ラジオのほうを見た。その予告音楽は、そこから流れでていたし、またその上の映写幕には目にうったえて臨時放送のやがてはじまるのを、赤と藍《あい》とのだんだら渦巻でもって知らせていた。
テレ・ラジオというのは、ラジオ受信機とテレビジョン受影機《じゅえいき》がいっしょになっている器械のことだ。みなさんはすでに知っておられることと思うが。……
(臨時放送は、まもなくはじまる。そうだ、すぐおじさんに知らせておかなくては。……あとで「なぜそんな重大なことをおしえなかったのか」などといって目をむくおじさんだから、知らせておいたほうがいい)
三根夫は、事務室をとびだすと、廊下を全速力で走って、いまものべたように、伯父の書斎までかけつけると、扉をどんどんたたいたのである。
なかから、大人の声が聞こえた。
「臨時ニュースの放送か。よしわかった。……鍵はかかっていないよ。こっちへはいってミネ君も聞くがいい」
伯父は三根夫のことを、いつもミネ君と呼んでいる。探偵を仕事としている伯父のことだから、なかなか気むずかしいこともあるが、ほんとはやさしい伯父なのである。
三根夫は扉をあけて、書斎にはいった。
伯父の帆村荘六《ほむらそうろく》は、寝衣《ねまき》のうえにガウンをひっかけたままで、暗号解読器をしきりにまわして目を光らせていた。このようすから察すると、伯父は夜中にとび起きて、なにかの暗号をときにかかったまま、朝をむかえたものらしい。
伯父の頭髪はくしゃくしゃで、長い毛がひたいにぶらさがって目をふさぎ
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