三根夫が作る工作品にしては、少々できすぎていると思われた。そうであった。これは三根夫が作ったものではなく、テッド隊の中に、こういう模型《もけい》ものを作る名手《めいしゅ》が三、四人いて、それが他の隊員にも教えながら、毎日ほかの仕事はしないで、南京ねずみの家と車ばかりを、えっさえっさと作っているのだった。
 これは、ちょっとふしぎなことに見えた。だが、これにはわけがあった。それは帆村が考えついたことであって、いまではテッド隊長もしょうちしていることだった。それは、このおそるべき怪星ガンから、テッド隊が脱出する秘密計画に、密接なつながりがあるのであった。
 はじめ、帆村がテッド隊長に、三根夫がれいの変調眼鏡を手に入れたことを報告した。そしてその眼鏡を使ってみると、はたしてガン人の奇妙な姿がありありと見えることや、こころみに各部屋をまわって、この変調眼鏡でみると、かならずといっていいほどのぞき穴が用意されてあり、そしてガン人がしばしばそこから首をつきだして、室内のようすをうかがっているのが見られたことを告げた。
「おお、なるほど、なるほど」
 隊長テッド博士も、さすがにこれにはおどろいて、さっと顔色をかえた。
「そして、いまこの部屋には、顔をだしていないのかね」
 それは大丈夫であった。帆村は、変調眼鏡を三根夫に借りてきて、頭からかぶって、天井の換気穴《かんきあな》に注意しながら、ガン人の覗いていないことをたしかめながらしゃべっているのであった。
「それで、隊長。わたしはこのさい、三根夫をつかってどんどん南京ねずみを売りだし、あのふしぎな働きをする変調眼鏡をどんどん買いこみたいと思うのです。どう思われますか」
「それはいいことだ。そういうものがあるなら、われわれはそれを利用して、ガン人に対抗していきたいと思うね」
「では、さっそく、その用意をしましょう。南京ねずみも、大いに繁殖《はんしょく》させるよう飼育班《しいくはん》を編成いたしましょう」
「そうだ。そのほうのことはきみにまかせる。そしていまわしは、重大なることを思いついたのだ。もっとこっちへ寄りたまえ」テッド隊長はひきよせんばかり帆村をそばへ招き、
「われわれはこの国でいまたいへんよく待遇されているし、またいろいろ観察したところ、ガン人はわれわれよりもずっとすぐれた、科学力その他を持っているように思う。しかしわれわれ
前へ 次へ
全120ページ中83ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング