歩くことができるなんて、こんなうれしいことはなかった。それは招待日の当日は病人がひとりもなくなったことによっても知れる。
そのまえに、三根夫少年はみんなから引《ひ》っ張《ぱ》り凧《だこ》だった。三根夫が一日はやく怪星ガンの町を見てきているので、町のようすについて三根夫はくわしく答えることができた。
「いろいろなものを売っているんだよ。たべものやのみものや服のない者は、ただで買えるんだ。そうでないものは金をださないと買えない。それからね、ガン人はたくさん歩いているらしいんだが、ぼくらの目にはまったく見えないんだ。これには面くらうよ。それからガン人たちはぼくらより高等な人間らしいところもあるけれど、地球の上のことをじゅうぶんに知っていないらしい。だから、ぼくの持っていた南京鼠《ナンキンねずみ》をガン人が見て非常警報をだしたくらいだ」
「へえーッ、あきれたもんだね。うわッはッはッ」
「はやく町へいってみたいなあ。出発はまだかしらん」
出発命令がでて、一同はぞろぞろと艇を出、横にのびた橋を渡り、れいの光る高い塔をおりていった。そして町へはいった。
みんなは、小学生の遠足のようにはしゃいでいた。歩くことだけでじゅうぶんうれしいところへもってきて、うつくしい商店のならぶ町を見、ただで手にはいるというおいしそうな果物や菓子をながめ、まったく夢のなかにいる感じだった。
大宴会場キング・オブ・スターズは、すぐ目のまえに高くそびえて、昼間だというのに、七色のうつくしい光りの束《たば》でかざられ、テッド博士以下を歓迎するという光りの文字がつづられては消え、消えては綴《つづ》られた。会場へはいっていくと、たえず頭のうえに案内人の声がして、一同は席につくまで、すこしもまごつくことがなかった。その大食堂というのが、これまた変っていて国技館のように円形になって卓がならび、そして外側は高く、内側へいくほど低くなっていた。
どこで調べたものか、隊員たちの名まえがはっきりと席の上にカードにしるしておいてあった。そこで席についてみるとふしぎなことがわかった。隊員たちは一つの空席をおいてとなり合って席をとるようになっていた。
「みょうなことをしたもんだね。間に一つずつ空席があるじゃないか。そっちへ席をうつして、きみのとなりへすわることにするよ」そういって隊員のひとりが、じぶんの席をたたいて、友だ
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