ります。困ったことですが、どうにもなりません。やくそくされた運命というのでしょう」
「いや、わしはそうは思わない。きみはもっと考えなおすべきだ。そしてガン人というものをもっと深く理解しなくてはならぬ」
「もしもし、そんな話は、もうそのくらいにして、やめたがいいでしょう。テッド博士たち、もうおかえりなさい」
 とつぜん頭の上で、われ鐘のような声がした。
「あッ。きみは誰?」
「ガンマ和尚《おしょう》ですわい」
「おお、ガンマ和尚」テッド博士は、しまったと思った。しかし声だけのガンマ和尚は、別に怒っているようにも思われず、おなじ調子の声で、
「くよくよしないで、街でたのしいものを見つけることですよ。つまらない話はしないのがいい。あすは、あなたたち全員を、わたしたちが招待して、たのしい歓迎会をひらきます。そのことを帰ったらみなさんに知らせてください」
「わたしたちのために、そんな会を開いてくださるのですか」
「あなたがたがその会にでれば、わたしたちの気持ももっとはっきりわかってくれるでしょう。さあさあ、にこにこ笑って、ここをおひきあげなさい」


   大食堂の異風景


 その翌日の大歓迎会は、まったくすばらしいものであった。また珍妙なものでもあった。
 テッド隊長以下三百名にちかい隊員全部が、この町の大宴会場キング・オブ・スターズに招待せられたのである。その招待の正式のあいさつは、いつどこから忍びこんできたのかわからないが、姿は見えぬながら声だけのガンマ和尚《おしょう》から、九台の宇宙艇内へ手おちなく伝えられた。
「へえーッ、おれたちを招待するというぜ。なにをたべさせるのかな。気持がわるいね」
「なあに、その心配はないさ。怪星ガンは大きな世帯らしいから、まさかわれわれの口にあわない彗星料理や星雲ビールなんかをだすことはないと思う」
「なんだい、その彗星料理だとか星雲ビールというのは。いったいどんなものか」
「さあ。どんなものかおれもしらないが、おまえは、そのへんてこなものがでるか心配していると思って、ちょっといってみたのだ」
「ははは。なにをでたら目をいうか」
 一同がなによりも喜んだのは、艇をでて、外を足で歩けるということだった。まったくながい間せまい艇内にこもってばかりいて、あきもあいたし、足がつかえてしまった感じだ。とてろがいま招待によって艇をでて、外をてくてく
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