だした。はて何事が起こったのであろうか。
怪獣《かいじゅう》南京《ナンキン》ねずみ
どんな大事件が起こったのであろうか。このときばかりは、テッド隊長も青くなったし、帆村荘六さえ、まっさおになってしまった。
(しまった。さっきサミユル博士との秘密の会話が、怪星ガンの支配者に聞かれてしまったのかな。やっぱり目に見えない密偵がわれわれをいつも番していたんだな。秘密の話なんかして、よくなかった)
ポオ助教授は、きょとんとしている。ケネデー軍曹は、服の中にしのばせたピストルへ手をのばした。三根夫少年は、どうしていたか。
かれは椅子からさっとすべりおりると、ハイロがわめきさけんでいる奥へかけこんだ。
すると、こんどは、またいっそうハイロのさけび声がはげしくなった。そして家具ががたんとたおれ、食器ががらがらとこわれるたいへんな物音がした。
「た、助けてくれ、助けてくれ」警報にまじって、ハイロのいまにも死にもうな叫び声がつづく。
「これはたいへんだ」テッド隊長は、ケネデー軍曹に目くばせをすると椅子から立ちあがって、三根夫のあとを追おうとした。
「お待ち、テッド君。ここが重大なときだ、かるはずみしてはいけない。動いてはならない」
サミユル先生が、ふたりをとめた。
「ですが、先生。奥のほうに何か騒動が起こっているに、ちがいありませんもの」
「いいや、ほっておきなさい。よけいなおせっかいをすると、ガン人はよろこばないのだ。われわれは捕虜《ほりょ》なんだから、ひかえていなくてはならない」
「しかし、先生。あのとおり死にそうな声をだしている。それに三根夫君もとびこんでしまった。少年を見殺しにできません。助けてやりたい」
テッド隊長は、居ても立ってもいられない思いに見えた。
「隊長。わたしがかわりにいってきますから、おまかせください」
「ああ、帆村君、きみがいくって……」
「たいしたことじゃないと思います。この一件でしょう」帆村は、卓上を指した。それは三根夫の席があるところの卓上だ。そこに小さい虫かごのようなものが一つおいてあった。
「なんだい、これは……」
「この籠の中にいたものが、騒動をひきおこしたんでしょう。サミユル先生。この国には人間以外の動物は、たくさんいますか」
「あまりいないねえ」
「ねずみなんか、どうですか」
「ねずみ。ああ、ねずみか。ねずみは見かけな
前へ
次へ
全120ページ中71ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング