に大きな力を持っていると思われる。あのきみょうな放電現象によって、本艇の外廓《がいかく》のうえには、黒いペンキのようなものが塗られた。そのために外が見えなくなった。この考えはどうですか」
「なるほど、その説によると、外界《がいかい》が見えなくなったことは、説明できるが、しかし本艇がガスを噴射しているにもかかわらず、すこしも前進しないのは何故かという説明がつかない。それとも、このうえにもっときみは説明をくわえますか」
「その黒いペンキのようなもの――それは非常にねばねばしたもので、われわれにはちょっと想像もできないが、それはしっかり本艇を宇宙のある一点へとめているのではなかろうか。つまり蠅《はえ》がとりもちにとまって動けなくなったとおなじように、本艇は、そのねばねばしたまっ黒いものに包まれ、そして動けなくなったのではないですかな」
「その考えはおもしろいが、しかしそれは想像にすぎない。想像ではなく、もっとはっきりした事実をつかまえ、そのうえに組立てた推理でなくてはならない」
「ですが、地球のうえならばともかく、このように宇宙の奥まで入りこんでいるのですから、ここではだいたんなものさし[#「ものさし」に傍点]で測る必要があります。地球のうえだけで通用するものさしで測っていたんではだめだと思います」
「そういう議論はあとにして、もっと実際の問題を論じてもらいたいね」
と、テッド隊長は注意した。
すると一同は、だまってしまった。
どう解こうにも、さっぱり手がかりがないとは、このことだ。さすがの救援隊のちえ袋といわれる博士たちも、いいだすことがなくなった。
「なにか考えをいってもらいたい」と、隊長はさいそくした。
しかし一同は、たがいに顔を見合わすばかりだった。
やっと口を開いた者があった。それは帆村荘六だった。
「さっぱり手がかりのないことを、いくら論じてみても、むだだと思います。それよりはもうすこし時間のたつのを待ったうえで、なにか新しい手がかりのみつかるのを待ち、あらためて論ずることにしてはどうでしょうか」
「まあ、そういうことになるね」
隊長は、帆村の説にさんせいした。
「では、しばらく待とう。会議はひとまず解散だ」
そういって隊長テッド博士が椅子から立ちあがったとき、三根夫がとつぜん大声で叫んで、テレビジョンの幕面を指した。
「あッ、光った棒のようなも
前へ
次へ
全120ページ中53ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング