のが、下のほうからこっちへ伸びてきますよ。あれはなんでしょう」


   光る怪塔《かいとう》


 光った棒のようなものが、下のほうからこっちへ伸びてくるとは何事であろう。
 三根夫少年が指すテレビジョンの映画へ、隊長以下の視線があつまる。
 ほんとうであった。たしかに光る棒が下方から伸びあがってくる。春さきの筍《たけのこ》が竹になるように伸びてくるのだった。
 それまでは四方八方が暗黒だったから、テレビジョンの幕面にはなんの明かるいものも見えなかった。ところがいま、三根夫の発見により、はじめて艇外に、目に見えるものが現われたのである。
「なんだろう。やっぱり棒かな」
「棒ともちがう。割れ目のようでもある」
「割れ目? なんの割れ目」
「割れ目ができて、となりの空間のあかりが割れ目からさしこむと、あのようになるではないか」
「なるほど」
「ちがう。光りの棒でも割れ目でもない。光る塔だ」
「光る塔! なるほど塔みたいだ。そうとう大きなものだ。しかし宇宙のなかに塔があるとは信じられない」
「だめだ、そんな風に、地球上だけで通用する法則だけにとらわれていては、この大宇宙の神秘はとけないですよ」
「また、さっきの議論のむしかえしか」
「いや、そうとってもらっては困る。とにかくわれわれは、頭のなかを一度きれいに掃除しておいて、そのきれいな頭でもって、われわれの目のまえに次々にあらわれる大宇宙の驚異《きょうい》をながめる必要がある。そうでないと、その驚異の正体を、はっきり解くことができないからねえ」
「おやおや、すてきに大きい塔だ。どう見ても塔だ。わたしは気がたしかなのであろうか」
 白光につつまれたその巨大なる怪塔は、下からぐんぐん伸びあがってきてやがて本艇と同じ高さにたっした。本艇の窓という窓には、艇員の顔があつまり、びっくりした顔つきでその光る怪塔を見まもる。
「帆村のおじさん。あの塔はなんでしょうか」
 三根夫は、このときやっとわれにかえり、帆村に質問をかけるほどのよゆうができた。
「はっきりはわからないが、あれは相手がわれわれに、一つの交通路を提供しようというのじゃないかなあ」
「なんですって」
 三根夫にとっては、帆村のいうことがさっぱりわからなかった。交通路の提供だの、相手だのというが、なんのことだろう。
「つまりだ、相手は、われわれに会いたいのだ。会うためには
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