ちのうえに、おそろしい死の影がさしているのだ。
もうじぶんを救うみちはないか。
奇怪なるこの大暗黒の秘密は何?
真相不明
司令艇の操縦席が、会議場になってしまった。
最高幹部と、本艇内にいて、科学技術をたんとうする十二人の博士などが集まって、これからどうしたらよいか。そしてこの奇怪な現象はなにごとであるかの協議をはじめた。
帆村もこれにくわわっていた。三根夫もいた。三根夫は帆村からいいつけられて会議を聞きながらも、本艇の周囲にたいしとくに注意をしていることになっていた。少年は、テレビジョンの六つの映写幕へ、かわるがわるするどい視線を動かした。
「まず、いまわれわれがどういう目にあっているんだか、意見をのべてもらいたい」
隊長がいった。
「宇宙塵《うちゅうじん》のかたまりのなかに突入したのではないかと思います。だから星の光りが見えなくなった」
博士のひとりが意見をのべた。
「いやいや、そうでないと思う。宇宙塵のかたまりというものがあって、その中へ突入したものなら、本艇はその宇宙塵につきあたるから、手ごたえが感じられるはずです。しかしそんな手ごたえはないではありませんか。また宇宙塵の中といえども、本艇は噴進することができるはずであるが、実際本艇は一メートルも前進することができないのです。ですから宇宙塵の考えは正しくない」
「では、きみは何と考えるのですか」
「わたしは暗黒星《あんこくせい》へ突っ込んだのではないかと思いますよ」
「それはおかしい。暗黒星のなかへ突っ込んだものなら、そのときにはげしい衝突が感ぜられ、本艇は破壊するでしょう」
「いや、暗黒星には、ねばっこい液体からできているものもあると思うのです。そういうものの中へ突っ込めば、かならずしも破壊が起こりはしない」
みんなの議論がかっぱつになった。
「諸君は、もっとも大切なことを見のがしておられる。それは星の光りが消えはじめるまえに、本艇はうす赤い光りで包まれていたことだ。あの光りはなんであろうか。あのふしぎな光りの謎をまず解かなくてはならない」
「おお、それはいいところへ目をつけられた。きみは、どう解くのか」
「わたしの考えでは、本艇は、なにかの外力をうけて、あのきみょうな放電現象となったのであろうと思う。その外力はなにものか、それはまだわかっていないが、ともかくもその外力は、非常
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