ろの鼠谷は、顔色は青かったが、涼しいクリクリする大きい眼を持ち、色は淡《うす》いが可愛い小さい唇を持った美少年だった。たまたま机を並び合ったというので、二人の少年はすぐ仲善《なかよ》しになってしまった。この仲善しは、年と共に濃厚になり、軈《やが》て大学を卒業すると二人はこれまでのように毎日会えなくなるだろうというので、女学生もやらないだろうと思われるほどの大騒ぎを起したのだった。
その揚句《あげく》、八十助と鼠谷とは一つのうまい方法を考えた。そのころ二人とも勤め先が決っていて、八十助は丸の内の保険会社に、鼠谷の方は築地《つきじ》の或る化粧品会社へ通勤することになっていた。それで申し合わせをして午後の五時ごろ、二人が勤め先を退けるが早いか、距離から云ってほぼ等しい銀座裏のジニアという喫茶店で落合い、そこで紅茶を啜《すす》りながら積もる話を交わすことにしたのだった。これは大変名案だった。二人はすっかり朗《ほがら》かになり、卒業のときに大騒ぎをしたのが可笑《おか》しく思われてならなかった。
ところがこの名案ジニアのランデヴー(?)は名案には違いなかったが、彼等二人の交際に思いがけない破局
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