水装置をつきだして棺桶の焼けるのを防ぐ仕掛けを作った。その次にあの罐の真下に当る地下室から棺桶を下げおろす仕掛けを作った。そして予《あらかじ》め用意して置いた人骨と灰とを代りに、あの煉瓦床の上に散らばらしておく。それでいいのだ。遺族の者は、すこしも怪しむことを知らない」
「ああ、悪魔! 君はそうして、私の妻の死体を引っ張り出して、自由にしたのだな」
「まア待ち給え。――僕はこの仕掛けに成功すると、こんどは人間を仮死に陥《おとしい》れる研究に始めて成功した。こいつはまた素晴らしい。奇妙な毒物なんだが溶かすと無味無臭で、誰も毒物が入っていると気がつかない。これを飲んで、識らないでいると、昏睡状態となり、そして遂に仮死の状態に陥すことができる。しかも医師たちはそれを真死と診断する外はない程巧妙な仮死だ。この二つの発明が、僕に火葬国の理想郷を建設する力を与えて呉《く》れた。それからこっちというものは、これはと思う人物を、巧《たくみ》に仮死に導いては、飛行機に乗せてこの火葬国へ送りつけ、そして君がこの部屋で経験したような順序で蘇生させていたのだ。傑出《けっしゅつ》した男であれ花恥かしい美女であれ
前へ
次へ
全41ページ中38ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング