だった。なおも後からフワリフワリと騰ってくるシャボン玉は、みるみる重なりあって、お互いに腹と腹とをプルンプルンと弾きあった。八十助は何だか自分の胸を締めつけられるような苦しさを感じたのであった。
 するとこんどはそのシャボン玉が、風に煽《あお》られるように、少しずつ騒《ざわ》めき立つと見る間に、やがてクルクルと廻りだした。その廻転は次第次第に速力を加え、お仕舞いにはまるで鳴門《なると》の渦巻のようになり、そうなるとシャボン玉の形も失せて、ただ灰白色の鈍い光を見るだけとなった。だんだん暗くなってゆく視野は、八十助の心臓をだんだん不安に陥《おと》しいれてゆくのであった。……
 そのとき、忽然として、泥土《でいど》の渦の中に、なにかピカリと光るものが見えた。なんだろうと、一生懸命みつめていると、その泥土の渦の中から浮び上って来たのは一つの丸い硝子《ガラス》器だった。その形は、夜店で売っている硝子の金魚鉢に似ていたが、内部は空虚《から》だった。
(金魚鉢なんだろうか?)
 と不審に思っていると、その鉢の底からパッと火焔が燃えだした。金魚鉢の上の穴からも真赤な焔《ほのお》の舌は盛んにメラメラと立
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