かかった。


   火焔下の金魚


 八十助は不思議な夢を見ていた。――
 クルン、クルン、クルン……
 妙な音のしている空間に、彼は宙ぶらりんになっていた。赤いような、そして青いような、ネオンの点滅を身に浴びているような気がした。
 クルン、クルン、クルン……
 細かい綾のような波紋が、軽快なピッチで押しよせてきては、彼の身体の上を通りすぎてゆくのであった。すると今度は、上からも下からも、左からも右からも、前からも後からも(後方《うしろ》さえよく見えたのだから、後で考えると不思議である)、美しい虹が、槍が降ってくるように真直《まっすぐ》に下りてきては、身体の傍をスレスレに通りすぎるのだった。それもやがて、水の泡沫のように消え去ると、今度は大小さまざまのシャボン玉が、あっちからもこっちからも群をなしてフワリフワリと騰《のぼ》ってくるのだった。
 クルン、クルン、クルン……
 シャボン玉の大群はゆらゆらと昇って、どこまでも騰ってゆくように見えたが、そのうちに何か号令でもかけられたかのように、その先頭のシャボン玉がピタリと止ってしまった。それは丁度、見えない天井につきあたったような具合
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