かと思った。
だが、ロボットでもないように思えるふしがあった。ロボットなら、歩調などは機械的に、ちょんちょんと正しくとるはずである。なぜなら、ロボットはたいてい、みんな電波などで動かされているわけだから、ちょうど電気時計と同じように、正しく動くはずである。
しかるに、今新田先生が見かけた怪しい人間の群は、人間と同じように、みんなが一人ずつ勝手気ままに動いていた。大またに歩いている者もあるし、ちょこちょこ歩いている者もあった。また互に何か話をしているようなのもいた。肩を組合っていたものさえあった。機械で出来た魂のないロボットが、そんなことをするであろうか。いやいや、そんなことはしまい。
「どうも、あいつらは、ロボットでもないらしい」
ロボットでなければ、一体彼らは何者であろうか。
新田先生は、小首をかしげた。
「……もしかすると、あいつらは、火星からやって来た生物ではあるまいか」
火星の生物?
新田先生は、そう考えて、はっと胸をおどらせた。
火星の生物は、この前千葉の湖畔へやって来たようである。千二少年の話によると、胴が太っていて手足が細くて、丸い頭があるというから、今見た怪物によく似ている。
「ふん、これは、たいへんなものを見つけたものだ」
先生はうなった。
これはいよいよ火星の生物どもに違いない。先生は怪物の後を追いかけることにした。
怪物たちは、いつしか隣の山の上に姿を消してしまった。山の向こうへ下りて行ったか、あるいはそのへんに、穴でもあるのではなかろうか。先生はわざと道を遠廻りして、けわしい山の傾斜をそろそろと上り始めた。先生の指先はやぶれて、血が流れ出した。
小一時間もかかって、先生はやっと山の上に上りついた。
「さあ、このへんに違いないのだが……」
先生はあたりに気をくばりながら、そっと岩かげから顔を出した。
「ほう、あった! あれだ!」
先生は、思わずおどろきの声を上げた。
何があったか? 先生の目にはいったのは、大きなドラム缶のようなものが、山の向こう側の斜面に、つっ立っているのであった。まるで小さな塔をそこに建てたような、かっこうであった。
「ああ、あれに違いない。千二君が言っていた火星のボートというのは、多分あれと同じものだろう」
何という奇妙な形をしたものであろうか。その大きな円筒は、表面がへんに焼け焦げたようにな
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