んだ。
山のてっぺんは、すぐ上に見えている。新田先生が、今、「おや」と叫んだのは、そのてっぺんのしげみの間から、西瓜《すいか》のように丸いものが四つ五つ重なり合って、動いているのを、見つけたからであった。
「あれは何だろう?」
先生は、すぐさま体を地に伏せた。それから、また、少しずつ前へ這って行った先生は、ちょうど、体をかくすのにつごうのいい岩かげを見つけ、ここへ滑りこんだ。そして、そっと首を出して、例の西瓜のようなものが、一体何であるか見きわめようとした。
西瓜のようなものは、人の頭であることがわかった。しげみの上から、人の頭が行列して、向こうへ歩いて行くのであった。それはしばしば木のかげになって、見えなくなったり、そうかと思うと、また、ひょっくり岩角から現れたりしたが、結局、不思議な人間の行列であることだけは、はっきりした。
「どうも、へんなかっこうをした人間どもだ」
始めは、木のしげみの上から、首だけを出していたその怪しい人間どもは、だんだんと峰伝いに奥の方へ歩いて行く。そうして、ようやく彼らの肩のへんが見え出し、やがて足のあたりまでも、見えるようになった。
彼らの頭は、いずれも西瓜のように、丸味を持っていた。その西瓜のような頭の下には、ドラム缶のようにふくれた太い胴がついており、首は短くて、あるのかないのか、はっきりわからないくらいだ。
奇怪なのは、彼らの手足であった。
腕は、えもん竹のように張った肩の両端から、まるで竹箒をつったように、細いやつがぶらぶらしている。足といえば、これも竹のように細く、曲っており、へんなかっこうで歩いている。全体の色は、すこぶるあざやかなみどり色だった。
一体、何者?
29[#「29」は縦中横] ロボット
峰伝いに遠ざかる怪人の群を、新田先生は岩かげから、ねっしんに見送っていた。
気がつくと先生は、全身にびっしょり冷たい汗をかいていた。
「な、何者であろうか?」
どうも、たいへんな怪物に出会ったものである。
よもや、あれはほんとうの人間ではあるまい。人造人間とかロボットとか言って、人間の形をした機械があるが、そのロボットではないかと思った。
それにしても、不思議なのは、こんな山の中に、ロボットがぶらぶら歩いていることである。ひょっとすると、軍隊がロボットをこの山の中で試験しているのではない
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