たので、相当りっぱなものを作ることが出来る見込である。そうして現に今も、たくさんのロケットが盛に作られている」
「第二の、我々は新たに住むべきところを、どこに発見すればいいかという問題は、なかなかむずかしい問題である。世界の多くの天文の知識のある人々は、誰しもそれは火星がいいというであろう。予等の考えも火星を最もよい移住星だと思っている。火星よりも工合のよさそうなところは他にないと思う。なぜなら、火星には、人間の呼吸に必要な空気がわりあい量は少いけれども、とにかく空気があることがわかっている。水があることもたしかめられているし、かなりおびただしい植物が茂っていることさえわかっている。また地球からの遠さも、他の星に比べると、まあ近い方である。こういう諸点から考えて、火星は一番いい移住先ではあるが、また心配なことがないでもない」
 リーズ卿はちょっと言葉を切った。
「火星へ移住することは、一番都合がよいように思われるが、一方において、心配がある。その心配とは、何かというのに、それは、火星の空気が、大変うすいことが、その第一である。空気がうすいから、肺の弱いものは、生きていられないであろうと思う。もっとも酸素吸入をやればいいことはわかっているが、火星へ着いてから、果して我々たくさんの人間全部が、酸素吸入が出来るほどの大設備がつくれるであろうか」
「第二の心配というのは、火星の生物と、果して仲よく暮していけるかどうかということである。火星には、多分生物がいる。それは、火星に空気があることや、植物地帯らしいものがうかがわれることや、それからまた我々は時々、火星人らしいものから無電信号を受取ることから考えても、まず、火星に生物がいることはうたがいないと思う。その火星人と果して仲よくつきあっていけるかどうか。これはなかなか心配なことである」
「我々の仲間には、火星人がきっと我々地球人類を、いじめるにちがいないと言っている者もある。それだから、我々が火星へ移住するためには、まず火星人とたたかわなければならない。つまり敵前上陸をやるつもりでなければ、この事は失敗に終ると言っている。しかし我々は、このようなことを言う仲間を大いに叱ってやる必要がある。すべては愛情でいきたいものである。敵前上陸とか、火星人征伐とか、そのようなおよそ火星人の気持を悪くするような言葉は、つつしまなければならな
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