ると聞いてからは、宇宙というものを、あらためて見なおさないわけにはいかなくなったのだ。
 昨日までのわが捜査課は、主として日本内地だけをにらんで仕事をしておればよかった。ところが、今日からは、大江山課長は、地球の外に果てしなくひろがる大宇宙にまで目を光らせなければ、すまないことになったのである。
(火星兵団? そうだ。これをあらためて考えなおす必要がある!)
 しかも、課長の驚きはそればかりではない。蟻田博士は、火星兵団員というものがあると言放ったのだ。そうして、この間から、捜査課をあげて、みんなで手わけして大童《おおわらわ》で探しているあの怪人丸木が、その火星兵団員だという蟻田博士の言葉は、二重三重に大江山課長を驚かせ、そうして、彼のあたまを、ぼうっとさせてしまった。
「ふうん、たいへんなことになった」
 と、課長はとうとう本音をはいた。
「早く千二少年に会わせて下さらんか」
 と蟻田博士は、白い髭の中から唇を動かした。
「ええ」
 と、大江山課長は返事をしたが、千二少年は、もうこの警視庁にはいないのである。
 そのことを博士に言うと、博士はたいへん怒った。
「じょうだんじゃない。さっきから、千二少年に会わせてくれと言っているのに、いないならいないと、なぜ早く教えないのか」
 これには、課長もまいった。博士の怒るのは道理であった。だが課長としては、自分が今困っている問題につき、博士から一刻も早く知識をすいとりたかったのである。それは課長の利益だけではなく、広く日本人のためになることでもあったから、そうしたのである。はじめから、千二はいないと答えれば、博士は、そうかと言って、そのまま帰ってしまったであろう。でも博士の怒りは、なかなかしずまらなかった。
「うーん、けしからん。君たちはいつでもそうだ。このわしを、だましては喜んでいる」
「博士、それは違います。警察官がだますということは、ぜったいにありません。どうか、考えちがいをしないように願います」
「いや、いつもわしをだましているぞ。この後は、君たちが何を聞いても、わしはしゃべらないぞ。そうして、わしはわしで勝手に思ったことをする」
 博士は、いよいよきげんが悪い。ステッキをにぎつている博士の手は、ぶるぶるとふるえて、今にも課長の机の上の電話機を叩きこわしそうである。低気圧がやって来たようなものだ。
 これには、さす
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