ていねいな言葉でたずねた。
「そんなことを、君たちに言ってもわからんよ。早く千二少年に会わせてくれ。その上で、君たちは、わしたちの話を、よこで聞いておればいいじゃないか」
「それでもけっこうです。が、博士。あの丸木という奴は、一体、何者なんですかねえ」
「丸木は、一体何者だと言うのか。ふふん。君たちは、わしを変だと思っている。だから、わしが言って聞かせてやっても、一向それを信じないだろうから、言わない方がましだよ」
「いえ、博士。ぜひとも教えていただきたいのです。私は、今までたいへん思いちがいをしておりました。博士に対して、つつしんでおわびをいたさねばなりません」
 課長は、そう言って、頭を下げた。
 すると博士は、びっくりしたように、目をみはったが、やがてにやりと笑い、
「ふふん、そういう気になっているんなら、まだ脈があるというものだ。だが、今さらわしが話をしてやっても、君たちに、どこまで、わしの言うことを信じる力があるかどうか、うたがわしいものじゃ」
「博士。私は、しんけんに、お教えを乞います。あの丸木という人は、何者なんですか」
「あの丸木かね。あれこそ、火星兵団の一員だよ」
「えっ、火星兵団の一員?」
 よくやく博士から釣りだした答えであったけれど、課長は、事の意外に、思わず大きなこえで反問した。
「そうだとも。火星兵団のことについては、ずっと前に、わしが君たちに警告した。そうしてわしは変だと言われたが、丸木こそ、その一員にちがいないと思うのだ」
 博士は、たいへんなことを言出した。
(丸木という怪人こそ、火星兵団の団員だ!)
 蟻田博士は、大江山課長の前で、そのように言切ったのだった。
 火星兵団――というのは、さきに蟻田博士が宇宙からひろいあげた言葉であった。そうして、蟻田博士は、そのことを放送したため、大事件を起したことは、読者も知っておられる通りである。だが、大江山課長は、この火星兵団のことをちょっと忘れていたかっこうだ。今、博士の口から、火星兵団という言葉を聞いて、はっと思い出したのであった。
(そうだ。この蟻田博士が、いつかこの火星兵団のことで、ばかばかしい警告放送をやったことがあったが……)
 大江山課長は、火星兵団のことを、前の時のように、今もばかばかしいと、片附けるわけにいかなくなった。先ほど警視総監の前で、モロー彗星が、やがて地球に衝突す
前へ 次へ
全318ページ中111ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング