は、話し方を知らないね」
「いえ、課長さんが、もう少し黙っていて下さると、話しよいのですが、むやみに、おいそがせになるもんですから困ります」
「何だ。手のかかることだね。よろしい、では、君が喋り終えるまで、こっちは、一言も喋らない。だが、もっと要領よく、そうしてもっと早く喋ってくれ。きょうは、いつになく気が短いのでね」
「は、それでは……」
と、主任は、例の追跡談をくわしく語り出したのであった。ついにその自動車は、麻布の崖の上から下に落ちてしまったことや、運転手が、まっ逆さまに落ちる自動車の中から、半身を出して、こっちをにらんだことなどを……。
交通主任の口は、なかなか重くて、話は一向スピードを上げなかった。しかもその話はたいへん詳しいので、話はなかなかおしまいにならないのであった。
だが、さっきまで、自分でいらいらしているんだと叫んでいた大江山課長は、どうしたわけか、別人のように、たいへん熱心に、この話に耳をかたむけているのだった。もっと早く喋れとも、もっと要領よく喋れとも、どっちとも言わなかった。
「……とにかく、不思議なことです。崖下へいって、焼けおちた自動車の車体をひっくりかえして見ましたが、運転手の死体はおろか、骨一本も、そこには見当らなかったのですからね」
と、交通主任は、その時のことを思い出したらしく、ここでもう一度不思議そうな思い入れをして、首をかしげた。
「で、少年の死体は?」
課長は、やっと一言、口を出した。
「実に、不思議という外ありません。運転台に一しょに乗っていたはずのその少年の死体も、やはり見当らないのです。全く、こんな不思議なことは、生まれてはじめてです」
交通主任は、「不思議」を盛にくりかえすのだった。
「まさか、君たちが見あやまったのではないだろうね」
「見あやまり? そ、そんなことは、けっしてありません」
交通主任は、これを報告して来た白バイの巡査をたいへん信用していたので、課長から、見あやまりではないかと言われると、一生けんめいにべんかいした。また、墜落現場へは、自分もいってみて、共に二人の死骸をさがしまわったのだった。
「不思議だ。どんなに考えても、ありそうな話だとは思われない」
課長は、腹立たしいような顔をして、握り合わせた両手で、とんとんと机の上を叩いた。
「課長、この話ばかりは、まじめに聞いていられません
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