洩《も》るように、イヤそれよりもX光線が木でも肉でも透《すか》すように、超短波は電気天井をスースー外へ抜けていたのでした。スースー外へ抜けているのですから、いくら放送局で電力を増してみても、地上には少しも応答《おうとう》のないのも無理はありません。超短波は電気天井を抜け、地球の羈絆《きはん》を切って一直線に宇宙へ黙々《もくもく》として前進しているのです。
「ああ、ちょっと聞き給え、変な電波が聴えるぜ。我が火星[#「火星」に傍点]にはこんな符号《ふごう》を打つ局はない筈《はず》だ、ハテナ?」
 というような訳で、この超短波は案外火星あたりで問題にしているのじゃないかと思われます。とにかく超短波の行方不明《ゆくえふめい》事件が幸《さいわ》いになって、電波の中には電気天井をスースー抜けるものがあることが判りました。とは云うものの未《いま》だに火星からも、
「オイ地球君! 待望の電波を有難《ありがと》う!」
 などと云って来ないところを見ると、出奔《しゅっぽん》した超短波の落ちつく先は案外怪しいかも知れないんですが、まだそこまで判っていません。
 この超短波をデアテルミーのように、人体《じんた
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