科学が臍を曲げた話
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)みなさん、科学《サイエンス》だって

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ダイヤを全部|坩堝《るつぼ》に入れて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)我が火星[#「火星」に傍点]には
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 みなさん、科学《サイエンス》だって、時には気むずかしいことがありますよ。そんなときには、臍《へそ》を曲げちまいますよ、臍をネ。
 童話みたいですが、昔、オーストリヤの王様が、世界最大のダイヤモンドを所有したいという欲望を持って、持っているだけのダイヤを全部|坩堝《るつぼ》に入れて融合させようと思ったところが、もともと炭素のかたまりであるダイヤは、忽《たちま》ち一陣の炭酸|瓦斯《ガス》と変じて、空中に掻《か》き消えたという昔話があります。これも臍まげの一つです。
 この時代、天下を横行した錬金術《れんきんじゅつ》というのは、頗《すこぶ》る大きな目標を持っていました。万物《ばんぶつ》何でも金《きん》に変えるというのです。到るところで錬金術師は鞴《ふいご》を吹いたりレトル
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