して台北《たいほく》へ下りてくるという風に、下りたところに受信機《じゅしんき》があれば聴える。この電気天井へ反射するため、短波は遠方でもよく聴える。中には下りて来たのが又地面にあたって反射し、再び電気天井にあたって反射し、もう一度下へ下りて来るというのもあります。しかし要《よう》するに、電波は上へ上っても、電気天井で跳《は》ねかえされることが判りました。
 ところが例の超短波になると、いくら電力を増しても届かぬので、一体どこへ行ってしまうのだか判らない。狐《きつね》に鼻をつままれたような恰好で、大迷宮《だいめいきゅう》事件にぶっつかったとでも云いたいところです。使いに出した者が途中で煙のように消えてしまうのですから、これは面妖《めんよう》な話。
 ところが其の後だんだん調べてみると、少しずつ判って来ました。そして遂《つい》に確かな結論が生れて、人々は「なアーんだ」ということになりました。超短波は一体|何処《どこ》へ行ったのか。地表と電気天井の間で煙のように消えてしまったものではなく、実に電波にとっては金城鉄壁《きんじょうてっぺき》だと思われていた電気天井をばまるで籠《かご》の目から水が
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